映画「八日目の蝉」絶対に泣きますよ あらすじと感想 

邦画

第35回日本アカデミー賞で10冠を獲得している名作です

あらすじ

子どもを身ごもるも、相手が結婚していたために出産をあきらめるしかない希和子(永作博美)は、ちょうど同じころに生まれた男の妻の赤ん坊を誘拐して逃亡する。
しかし、二人の母娘としての幸せな暮らしは4年で終わる。
さらに数年後、本当の両親にわだかまりを感じながら成長した恵理菜(井上真央)は大学生になり、家庭を持つ男の子どもを妊娠してしまう。

シネマトゥデイより

監督:成島出:「孤高のメス」「ソロモンの偽証」
原作:角田光代 「対岸の彼女」「紙の月」
脚本:奥寺佐渡子:「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」

キャスト
井上真央:秋山恵理菜=薫
永作博美:野々宮希和子
小池栄子:安藤千草
森口瑤子:秋山恵津子
田中哲司:秋山丈博
渡邉このみ : 薫(子ども時代)
劇団ひとり:岸田孝史

感想
懐かしい。アマゾンプライムにて鑑賞。
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした」というキャッチコピー

公開当時、友人に誘われ映画館で観ましたが…号泣しました。
まさか自分があんなに泣くとは思ってなくて、でもこれは涙なしには見られません。

もしも自分が希和子だったら?  恵理菜だったら?   母・恵津子だったら?

映画を観るとき、つい誰かに感情移入して観てしまいますが誰に感情移入してもキツイ!

希和子(永作博美)
希和子はきっと不倫相手である秋山と恵津子の間に子供が生まれたことを知って、
一目見たかった。
お家に侵入するのはダメだけど、でもきっと一目見たらすぐ帰るつもりだった。
それが…泣いていた赤ちゃんが泣きやみ希和子に笑いかけてくれたから…
「…薫」と呼ぶと笑ったから…
希和子が絶対に産みたかった「薫」 
希和子のところへ産まれてくるはずだった「薫」 

だって愛する人と決めた名前なのです。「薫」という名前にしようと。

もう希和子にとってこの赤ちゃんは自分の子「薫」でした。

そして「薫」との4年間の逃亡生活が始まります。

秋山恵理菜=薫(井上真央)
大学生になった恵理菜は 実家を出て一人暮らしをしながら居酒屋でアルバイトをしています。
恵理菜が自転車で坂を駆け降りる時の仕草が、幼いころ共に過ごした希和子の仕草と一緒…
希和子と4年間「親子」として過ごした証が残されています。
居酒屋にやってくる一人の男性・岸田(劇団ひとり)は恵理菜の不倫相手。

恵理菜を見てるとまた切ない。
誘拐された過去を持ち、せっかく本当の家族の元へ帰ってきたのに
家族同士ギクシャクして上手くいっていないのが伝わってきます。
そして誰にも心を開いておらず友達もいなくて孤独。
後に岸田との子を妊娠したことが判明します。

母:恵津子=森口瑤子
旦那には不倫され、産まれたばかりの我が子は誘拐される。
「恵理菜」がいない4年間。
どんな気持ちだったでしょうか。そして犯人は旦那の不倫相手
4年後やっと帰ってきた我が子は本当の両親に会った瞬間お漏らしをしてしまう…

その後も恵理菜は交番で保護され「知らないおじさんとおばさんの家につかまっている、
逃げてきた」と言ったり、
夜眠る前に恵理菜がお星さまの歌をリクエストしますが恵津子が歌うと
恵理菜に「そうじゃない」と全て否定されてしまいます。
恵津子は半狂乱になり恵理菜は謝りながら大泣き。もう観てて涙が出ます。
こんな経験したら誰でもおかしくなってしまう。
4年間の親子の空白は大きいです。

映画冒頭の裁判シーンでなぜ傍聴席から恵津子が希和子に
「死んでしまえ!死ねばいい!死ね!死ね!」と狂ったように叫んだのか。
恵津子の気持ちが痛いほどわかります。

誰も悪くないような気が…誘拐やお家への侵入は勿論ダメですが
自分がもし彼女たちの立場だったら、おかしくなってしまうかも…

あ、秋山は悪いですけどね。不倫して妊娠させた希和子に
「今は無理だ、女房にはちゃんと話して別れるから!」等と言い結局中絶させてますからね。

この映画に出てくる男は皆、本当に勝手!

恵理菜も妊娠、その相手もまた家庭を持つ男。うー悲しいなあ。

そんな恵理菜の前にライターの安藤千草が現れ、
「誘拐事件の真相を調べている。本にしたい」と言ってきます。

※この映画をきっかけに小池栄子さんが大好きになりました。
演技力の高さに圧倒されてしまいました。最初たどたどしく千草の話す姿に
「あれ?セリフ棒読み?」とアホな私は勘違い…
話が進むにつれ安藤千草の過去が明らかになり、だからああいう話し方をしてたんだ!と。
細かい演技に魅せられました。素晴らしかったです。

千草と恵理菜が希和子の足跡をたどっていき、少しずつ少しずつ希和子との思い出がよみがえってくる、のですが

「エンジェルホーム」という施設での出来事や、ママが歌ってくれたお星さまの歌
小豆島のそうめん工場、優しいおじさんおばさん
皆と過ごした日々、お祭り
ママが言ってくれた「いろんなきれいなものを一緒に見よう」という言葉

色々な記憶が蘇ってきます。そしてわかったことは

憎むべき誘拐犯が、本当は大好きだったお母さん。

これに気づいたとき恵理菜は長い長い呪縛から解き放たれたのだと思います。

千草は「八日目の蝉は、七日目の蝉が見られなかった、何かをみられる。
もしかしたらそれはすごく綺麗なものかもしれない」と言っていました。

映画のタイトルである「八日目の蝉」希和子と薫のことなのかな?と思いました。

二人が過ごしたあのかけがえのない時間…あの時間こそが「八日目」だったのではないかと思います。

希和子が薫に見せてあげたかった景色を
今度は恵理菜が産まれてくる子供に見せてあげられるといいな

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